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客引き対策のKPIは「何件指導したか」か、「客引きをさせなかったか」か

客引き対策へのAI導入が各自治体で具体化。指導件数だけでなく、現場運用と「客引きをどれだけ減らせたか」をKPIにする考え方を整理します。

客引き対策のKPIは、「何件指導したか」でいいのでしょうか。

指導件数が増えれば、現場がよく動いたことは分かります。ただし、同じ場所・同じ時間帯で客引きが発生し続けているなら、指導員の負担は減りません。本来の目的は、指導件数を最大化することではなく、客引きをしにくい状態をつくることです。

この記事では、各自治体で具体化しているAI活用の動向を整理したうえで、客引き対策を「検知件数」ではなく「現場運用」と「抑止」のKPIで考えます。自治体実務では条例等に基づく指導・勧告・命令・処分として扱われる場面が多いため、以下では「捕まえる」ではなく「指導・対応」と表現します。

客引き対策は、人手を使い続ける都市運営の仕事になっている

客引きは、一度取り締まれば終わる課題ではありません。場所や時間を変えたり、指導後に再び戻ったりするため、自治体は継続的に巡回、現認、指導、啓発を行っています。

岐阜市の公開情報では、条例を全面施行した2021年10月から2026年8月までに、客引き行為等に対して指導533件、勧告255件、命令254件、過料163件、公表78件が行われています。

大阪市の2026年度予算案でも、「客引き行為等の適正化に係る取組」として2億7,600万円を計上し、適正化指導員による行政指導・処分、パトロールスタッフによる口頭注意や啓発を継続しています。

これらの数字は自治体ごとに制度も範囲も異なるため、単純比較はできません。ただ、客引き対策が「街中を見回り、見つけ、確認し、対応する」という人手のかかる業務であり続けていることは分かります。

ここで重要なのは、指導件数は活動量を表すが、成果そのものとは限らないことです。

2025年末から2026年、客引き対策へのAI導入が具体化している

ここ1年ほどで変化しているのが、客引き対策にAIカメラや行動検知を組み込む自治体案件です。

水戸市は2025年12月から、繁華街でAIと高機能カメラを活用し、客引きと疑われる行為等を検知した場合に注意喚起音声を流し、警察へのデータ提供・連携につなげる仕組みの運用を開始しています。

新潟市は2026年、新潟駅前地区で悪質な客引き行為の抑止と実態把握を目的とするAI防犯カメラシステム整備を公募し、7月に事業者候補を選定しました。

北九州市も2026年9月24日、小倉駅周辺を対象とする「客引き行為等防止AI防犯カメラシステム実証実験業務委託」を公募しました。委託料上限は600万円です。

そして名古屋市では2026年9月、Hatch Technology NAGOYAの社会課題DX枠で、「名古屋発、全国の客引き問題を解決する防犯モデルを創りたい!」というテーマの実証事業者としてHULIXが選定されました。実証は2026年9月から2027年2月にかけて行われ、成果は今後検証されます。

各案件の予算、方式、対象エリアは異なるため、これらを足して「市場規模」と呼ぶことはできません。一方で、記録する防犯カメラから、検知・注意喚起・現場対応・分析までつなぐ仕組みへ、自治体の要求が具体化していることは読み取れます。

AIで「見つける」だけでは、指導員の仕事は減らない

客引き検知で難しいのは、単に「人がいる」ことを検知しても意味がない点です。

長く立っている人が客引きとは限りません。待ち合わせかもしれませんし、店舗スタッフや通行人かもしれません。反対に、客引きは一か所に長時間静止するとは限らず、通行人への接近、移動、往復、離散・再集合などを繰り返します。

そのため、AIの役割は違反を断定することではなく、時間軸の行動から「確認すべき候補」を絞ることだと考えています。最終的な現認や指導の判断は人が担う、Human-in-the-loopの設計が現実的です。

AIの候補提示から人の現認、対応、結果確認へつなぐ警備支援の業務設計
HULIXで開発中の警備支援の考え方を整理した説明図。名古屋市実証の実稼働画面や効果測定結果ではありません。

もう一つの問題は、検知後です。AIが通知を出しても、指導員が画面を見る、場所を確認する、誰が向かうか決める、現地へ移動する、到着したら対象がいない――という状態では、通知だけ増えて仕事は減りません。

必要なのは、検知 → 候補化 → 移動把握 → 現認 → 指導・注意喚起 → 結果記録 → 再発確認までを一つの運用として設計することです。

AIの精度だけではなく、情報が古くなっていないか、同じ案件へ複数班が向かっていないか、対応結果が次の担当者へ残っているかまで見なければ、省力化にはつながりません。

KPIは「Output」と「Outcome」を分ける

客引き対策では、KPIを二段階に分けると整理しやすくなります。

運用KPI(Output)成果KPI(Outcome)
検知候補のうち現認できた割合客引き行為が発生している時間
検知から現認までの時間同一地点での滞在時間
現地へ行ったが対象がいない空振り率指導後の再発・再出現頻度
1件あたりの移動・確認・記録工数客引きが集中する地点・時間帯の変化
同一案件への重複対応指導員の対応が必要だった総時間

Outputは、指導員がどれだけ無駄なく動けたかを見る指標です。まずここを改善しなければ、AIを入れても現場負担は減りません。

一方、Outcomeは本来の目的です。例えば、検知性能が上がれば指導件数は一時的に増える可能性があります。それを「対策が成功した」と判断してしまうと、本質を見誤ります。

最終的に見たいのは、客引きが何件見つかったかではなく、客引き行為がどれだけ減ったかです。

ただし「発生しなかった」は、そのままでは見えない数字です。導入前後で同じ時間帯・同じ範囲を継続観測し、曜日、天候、イベントなどの条件差も確認する必要があります。AIを使う意味は、検知を自動化するだけではなく、この「抑止」を評価できるデータを残すことにもあります。

名古屋で検証し、全国へ共同提案できるパートナーを募集します

HULIXは、名古屋市のHatch Technology NAGOYAで選定された客引き対策の実証を通じ、単なる検知精度ではなく、指導員の現場運用と、その先の抑止をどう評価するかを検証していきます。

現時点で実証成果を断定することはしません。名古屋で何が有効だったかは、実際の運用データを見て評価します。

同時に、この課題はAI企業だけでは解けないと考えています。カメラ・ネットワーク・通信、現地施工、警備運用、自治体との調整、既存システム連携が必要だからです。

HULIXでは、客引き検知・防犯AIを自治体や企業へ共同提案いただけるパートナー企業を募集しています。

  • 自治体・公共分野への提案基盤を持つ企業
  • 警備会社、警備サービス事業者
  • 防犯カメラ・映像システム事業者
  • SIer、通信事業者
  • カメラ・ネットワークの施工・保守事業者
  • スマートシティ、まちづくり、防犯分野に取り組む企業

地域ごとの条例や運用に合わせ、AIによる候補抽出、追跡・空間解析、現場への通知・対応記録などを組み合わせ、「見つけるAI」ではなく「客引きをしにくくする運用」を共同設計したいと考えています。

客引き対策の問いは、何件指導したか。ではなく、何件の指導が必要な状態を減らせたか。

このKPIまで測れる仕組みをつくることが、次の客引き対策だと思っています。

参考にした公開情報

メイン画像および本文中の図は説明用のイメージ・説明図です。名古屋市実証の実画面、実測結果、検知精度を示すものではありません。

客引き・防犯AIの共同提案を相談する

対象地域、現在の巡回・放送設備、導入したい時期を、分かる範囲でお知らせください。AI解析・カメラ・施工・警備運用の役割分担と、実証で確認する項目を整理します。

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