technology

テクノロジー解説 / 技術詳細

_

13

LiDAR人流解析を支える技術。ToF原理から点群処理、ハードウェア選定まで

ToFの物理的原理、点群データ処理アルゴリズム、Livox Mid-360とHesai系の選定基準、エッジコンピューティング設計――LiDAR人流解析の全技術スタックを実装視点で開示。

Author

HULIX編集部

Published

May 10, 2026

Updated

May 10, 2026

技術検討中のエンジニア・SIer・研究者

Section 01 — Challenge

課題

LiDARの「中身」を理解せずに導入してはいけない

LiDAR人流解析導入でよく起きる失敗は、ベンダー提案を「ブラックボックス」のまま受け入れてしまうことだ。LiDARはToFという物理現象を利用したセンサーであり、原理・特性・限界を理解しないまま運用を始めると、想定外のシーンで精度が出なかった時に対処できない。

本稿では、HULIXが現場で蓄積した知見を元に、LiDAR人流解析の技術スタックを「原理」「ハードウェア」「処理ソフトウェア」「インフラ」の4層で整理する。

Section 02 — Approach

アプローチ

4層スタックの全容

1層目:物理原理(ToF)

LiDARはレーザー光を発射してから対象物に反射して戻るまでの時間を測定し、距離を算出する技術。光速は既知なので、往復時間から距離が直接逆算できる。

走査機構(メカニカル回転、MEMS、フラッシュ等)と組み合わせて空間の各方位距離を取得することで、3次元距離マップ(点群)が得られる。重要なのは、カメラのような「画像処理を経た推定」ではなく、物理現象そのものの直接計測であることだ。

2層目:ハードウェア選定

  • 点群レート(points/sec):高いほど細かい動きが追える。Mid-360で約20万pps、上位機種で200万pps以上
  • 視野角(FoV):屋内設置では水平360度を持つMid-360が有利
  • 測距距離:屋内10m級、屋外40m級、長距離100m超まで機種別に存在
  • 反射強度(Intensity):物体の素材・色を間接判別する手がかり

3層目:点群処理ソフトウェア

  • 背景差分:静的な構造物を学習し、動的物体のみを抽出
  • クラスタリング:DBSCAN等の密度ベースクラスタリングで点群塊を個体に分離
  • 追跡(トラッキング):カルマンフィルタ等でフレーム間同一個体を紐付け
  • 分類:個体の形状・サイズ・反射強度から「人」「手荷物」「車両」を判別

4層目:エッジコンピューティング基盤

大量の点群データをクラウドへ送信して処理する設計は、帯域・遅延・コストどの観点でも非現実的。HULIXは現場LAN内のエッジPCで点群処理を完結し、結果データのみをクラウドダッシュボードへ送る構成を標準とする。

センサー構成
Livox Mid-360(屋内汎用) / Hesai系長距離機 / エッジPC(GPU搭載産業用)
Section 03 — Outcome

成果

機種選定の実践基準

Livox Mid-360(屋内汎用)

水平360度視野・10m級測距・コンパクト筐体で、屋内人流解析の事実上の主力。天井設置で店舗・オフィス・空港待合エリアに広く適用可能。人体スケールのトラッキングには十分。

Hesai系(広域・長距離)

40m〜100m超の長距離計測が可能で、屋外広場・大型ターミナル・ドローン搭載に適する。新機種JT-16等は商社経由で販売延期等の動きがあり、調達時には最新一次情報の確認が必須。

選定の判断軸

  • 屋内・小〜中規模:Mid-360複数台。コスト・設置容易性が最良
  • 屋内・大規模(空港・駅):Mid-360を数十台規模。NTP/PTP同期と複数機キャリブレーションが必須
  • 屋外・広域:Hesai長距離機を主軸に、補助でMid-360を境界に配置
  • UAV搭載・移動計測:軽量・耐振動の小型機種を選定

処理基盤の構成

エッジPCのスペック目安

4〜8台のLiDARを束ねる場合、GPU搭載産業用PC(Jetson AGX Orin級〜RTX系搭載デスクトップ)が現実解。10台超は処理ノードを分散。

クラウド側ダッシュボード

「ひとなびStudio」等のSaaSダッシュボードと連携し、可視化・KPIモニタリングを提供。生データ・集計データはAPIまたはCSVで顧客側へ常時エクスポート可能。

他社との決定的な違い

1. 自社AIモデルと追加学習で現場適合

他社はハード販売主軸・ソフト主軸のどちらかに偏るが、HULIXは自社AIモデルを社内に保持し、人以外の物体検知・追跡ができる。現場固有の物体・形状・反射パターンに合わせて追加学習させることで、複雑な環境でも高精度検知を実現できる。

2. 業界別の分析テンプレートをスタック

小売・空港・駅・公共空間・観光といった業界ごとの分析パターンをテンプレート化して保有。他社は汎用点群処理ソフトだけを提供するが、HULIXは現場課題に上からフィットした出力を初日から提供できる。

3. HULIX TWIN・Report生成システムとの組み込み

取得した点群・動線データはHULIX独自のデジタルツイン基盤と、Report自動生成システムにシームレスに組み込める。計測ダッシュボードを見て終わりではなく、空間そのものをツイン化して施策シミュレーションへ繋ぎ、運用レポート・行政向けエビデンスレポートまでを自動出力できる。点群解析からレポート提出までを一気通貫で担保するのは、HULIXが社内に技術スタックを揃えているからこそ可能だ。

Section 04 — Practitioner Notes

現場ノウハウ

センサースペックや公式ドキュメントには載らない、現場で手を動かした人間にしか書けない一次情報。

カタログには載らない選定知

Mid-360の点群範囲特性

天井設置で見下ろす配置では、真下から数m外側のリング状領域で点群密度が最大化し、直下と最外周は密度が落ちる。設置間隔設計時にはこの密度マップを前提に、隣接機との重なりを意図的に作る。

Hesai新機種の調達タイミング

Hesai社の新機種(JT-16等)は商社経由で販売延期や仕様確定の遅延が発生することがある。要件確定とハード選定は商社経由で出荷ロット情報を確認しながら進める。

3Dシミュレーターによる事前死角検証

導入前に3Dシミュレーターで設置台数と死角を検証することで、無駄な機器コストを抑えつつ最高精度を引き出す設計が可能。

反射強度ベースのチューニング

ベースラインは現場の照明設計と床材で大きく変動する。導入時に1〜2週間の実測データから動的閾値を学習させる工程が必要で、固定閾値では精度が出ない。

停電復旧シーケンス

クリティカルインフラ用途では、予期せぬ停電後の自動再起動シーケンスを完備。電源復旧→OS起動→アプリ自動起動→自己診断→運用再開までを無人で完了し、最終確認のみリモートで済む設計が必須。

FAQ

よくある質問

よくある質問

Q. 自社開発と既製品どちらが良いですか?

A. ハードウェアは既製品(Livox/Hesai/Velodyne等)を使い、点群処理ソフトウェアと業務適用ロジックは用途特化で構築するのが現実解です。HULIXもこの方針で実装しています。

Q. オープンソースのライブラリで何ができますか?

A. PCL、Open3D等で基本的な点群処理は実装できます。ただし業務用途の精度・堅牢性・運用機能はオープンソースだけでは不足するため、商用化パイプラインの利用を推奨します。

Q. データ容量の管理はどうしていますか?

A. 生点群データはエッジで処理して結果データのみをクラウドへ送るため、長期保存容量は大幅に圧縮されます。

Q. 既存のBI・分析基盤と連携できますか?

A. APIまたはCSVで常時エクスポートに対応しています。Tableau、Power BI、Looker等の主要BIツールへの取り込み実績があります。

Talk to HULIX

空間の課題を、データで解く。

PoC・設置シミュレーション・技術相談を承ります。LiDARの実機デモも可能です。

お問い合わせ・デモのご案内