「追跡精度は何%ですか」。必要な質問ですが、数字一つでは現場で使えるか判断できません。
待ち時間を出したいのに、途中で同じ人のIDが変わる。二人の記録が一つにつながる。短い映像ではよく見えても、こうした失敗があると、分析する数字が変わります。
HULIXの評価記録を見返しても、改善につながっているのは、失敗した場面まで戻れる記録でした。
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対象が隠れた間は、直前の位置や速度から移動を予測することがあります。それ自体は追跡に必要ですが、予測の位置を実際の観測と混ぜると、評価が難しくなります。
報告書の滞在時間が長いとき、本当に止まっていたのか。見失った後も、同じ場所にいると予測していたのか。この違いを調べられるようにします。
HULIXの評価設計でも、観測と補完、個別センサーのIDと統合後のIDを区別する記録を重視しています。画面では滑らかにつながっていても、その中身まで確かめるためです。
例えば、ほかの観測で位置を補っていた時間まで含めれば、追跡が続いている時間は長くなります。過去の評価でも、直接追跡できた時間と、補完を含めた時間を分けて集計しています。どちらか一方を都合よく選ぶと、同じシステムでも違う印象の数字になります。
おおよその位置を画面で案内する用途と、狭い区域へ入った時刻を測る用途では、補完に求める条件が違います。まず分母と分子を決め、見失った区間をどう扱ったかを添えます。「何%か」の前に「何を成功とした割合か」を合わせることが、評価の出発点です。
過去のカメラ追跡の評価では、対象が重なった後に追う相手が入れ替わる場面がありました。検出枠の揺れや撮影方向、計算機側の処理条件も確認しています。
下の図は、対象とカメラの位置関係を変えて、追跡が外れた条件を見返した記録です。施設内の移動経路を描いた地図ではありません。

集計値が悪いからといって、全部を同じ原因にはできません。人物を検出できていないのか。検出はあるが、対応付けで別人を選んだのか。処理が間に合わず、時間が飛んだのか。修正する場所が違います。
失敗した時刻と、前後の映像・点群、元の検出、統合した軌跡がそろっていれば、原因を追えます。結果の軌跡だけを保存していると、もう一度現地で取り直すことにもなります。
失敗が起きる条件に偏りがないかも見ます。すれ違うときだけ外れるのか、センサーの境界で外れるのか。多く試した経路ほど失敗件数も増えるので、件数だけで原因を決めないようにします。過去の個別評価を、現在のHULIX製品すべてに当てはまる性能値としても扱いません。
評価メモに疑問符や「件数が少ない」という留保があるなら、そのまま残した方がよいと思います。観測した失敗と、原因についての仮説は、次に確かめることが違うからです。
実装では、次の三つを分けて集計すると、修正先を絞りやすくなります。
| 起きたこと | 業務データへの影響 |
|---|---|
| 同じ人のIDが変わる | 一つの滞在が短い記録に分かれる |
| 二人を一人につなぐ | 待ち時間や移動経路を誤る |
| 見失った後に戻れない | 出口や待ち終わりが欠ける |
HOTAのように検出と対応付けの両面を扱う指標も参考になります。ただし、ベンチマークの点数と、自分の現場で許容できる誤差は別に確かめます。HOTA原論文
例えば、全体の人数は合っていても、長く待った人だけ記録が切れていれば、待ち時間の評価は楽観的になります。合計人数だけでなく、重要な区間に偏って失敗していないかを見る必要があります。
評価対象の区間は、元の映像や点群へ戻れる形で残します。統合したIDから、その時刻に使ったセンサーの観測をたどれるか。表示を補完していたなら、最後に実際の観測が入ったのはいつか。こうした情報が、再現のための入口になります。
ただし、ログ上でIDの対応が変わったからといって、実際に人物が入れ替わったとは限りません。元のID自体が誤っていることもあります。人が確認した映像や注釈と照合し、正解側の判断も確かめる。ログの集計は、人が見る区間を絞る道具として使います。
追跡の評価には、いつもの動作だけでなく、停止や復旧も含めます。センサーが一台止まったとき、どの区域が観測できなくなったか。復帰後に同じ人を二重に数えていないか。通信が戻って過去のデータが届いたとき、現在の状態として表示されないかを見ます。
処理負荷にも時間の変化があります。起動直後は間に合っていても、長時間動かした後に遅れが増えるなら、利用者が多い場所の分析に影響します。CPUやGPUの使用率だけでなく、データを観測した時刻から画面や通知に出るまでの遅れを記録します。
HULIXで履歴と再生を重視しているのは、このような違いを同じ条件で見返したいからです。修正のたびに別の日のデータを持ってくると、改善したのが処理なのか、単に混み方が違ったのか分からなくなります。
集計する単位にも注意します。一フレームごとの正しさを見る評価と、一人が入口から出口までつながったかを見る評価は、同じ割合にはなりません。長い区間ほど、一度も切れずにつなぐ条件は厳しくなります。比較する区間の長さまでそろえておきます。
待ち時間を作る用途なら、入口と出口がそろった記録の割合も確かめたいところです。途中までの移動は正しくても、出口が欠ければ待ち終わりが分かりません。平均の誤差だけでなく、そもそも待ち時間を計算できた人が、対象者のうち何人いたかを残します。
また、失敗した時刻だけを渡されても、原因を再現できないことがあります。前後の動き、使った処理の版、設定、センサーの状態を一緒に残す。別の担当者が同じ区間を再生して確認できれば、調整の引き継ぎも楽になります。
評価を依頼する側も、点数の一覧だけ受け取るより、代表的な失敗を数件見せてもらう方が判断しやすくなります。どの失敗が自分の業務に影響し、どれなら許容できるかを話せるからです。評価表と再生する記録の両方があると、技術側と運用側の話がつながります。
失敗した映像で設定を直す。その映像で良くなったことを確認する。ここまでは必要ですが、それだけでは別の日にも使えるか分かりません。
調整に使っていない時間帯や、混み方が違う区間でも確かめます。センサーや処理を止めた後に戻るか、長時間動かして遅れが増えないかも、現場で使うための評価です。
修正前後は、同じ元データと条件で比較します。集計ルールまで変えたなら、その変更を残す。そうしないと、追跡が良くなったのか、数え方が変わっただけなのか分からなくなります。
HULIXが履歴や再生の道具を持つのは、きれいな軌跡を見せるためだけではありません。外れた理由を確認し、直した結果を説明できるようにするためです。まず一つ、実際に外れた区間を、再現できる形で残すところから始めるのがよいと思います。
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